
壇てるゑ先生 のご連絡です
昨夜あなたに手紙を送ってから、意外な人物から連絡があったんだよ。
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連絡を寄越したのは、あたしの鑑定師人生の中で生涯最高の弟子とも言える伝説の男だった。
名前は、あえて伏せさせてもらう。
いつだってあの男は、まるで神様としか思えないぐらい狙いすましたタイミングであたしへ連絡を寄越してくるもんだからさ。
今回もそうだ。
開口一番にあの男はこう言った。
「旅の手土産を渡すついでに、師の顔を見に行きたい」
なんて言ってたけどさ、あいつはあの神懸かった感性で気付いていたんだと思う。
あたしが一世一代の大勝負に出ようとしていたことにね。
連絡から程なくして、温泉街の饅頭片手に現れたあの男はあたしの顔を見て、
「あたしにできることがあれば、何なりと」
と、それだけ口にした。
この大一番に弟子の手を借りるなんて、照れ臭い気持ちもあったけどさ。
そんなつまらない意地を張る意味がどこにもないことは、あたしもわかってた。
当家に伝わる最強の施術である、【真幸の縁結び】。
この施術を行う為に必要な準備を行うにあたって、彼は正に最強の援軍だった。
【真幸の縁結び】は、当家の歴史の中でご縁を頂いた全ての天神の力を借りて、
「terriさん」と「terriさんの幸せな未来」を繋ぎ合わせ、そして引き寄せ合わせる最強の縁結びだ。
専用の祭壇にterriさんの鑑定書を奉納し、弟子と共に数多の天神達へと祈りを捧げさせてもらった。
「この書に宿る運命に、未来の幸福を」
「数多の善徳に、幸福の報いを」
「真実の愛を未来にもたらさん」
「真実の富を未来にもたらさん」
「あらゆる災いからこの者を守りたまえ」
「最速の幸福を、引き寄せたまえ」
「全ての天神達よ、未来に祝福を」
灯したロウソクの炎がこの額に汗をにじませる中、何度も何度も祈りを捧げ続けた。
そして、真っ暗な闇に太陽の灯りが昇り始める頃に、それは起こった。
あなたの鑑定書に、途端に十本の「糸」がもたらされたんだ。
一本一本の糸は、それぞれがあなたが手にできる未来に続く縁の糸そのもの。
【愛し愛される未来】【富に満たされた未来】
【人の縁に恵まれた未来】【天職で活躍する未来】
【円満な家庭を築く未来】【大勝負に打ち勝つ未来】
【才能が開花する未来】【大切な人を守り抜く未来】
【精神的に健やかな未来】【壮健な肉体を得る未来】
十本の糸の先にあるのは、以上十種の未来だ。
terriさん、全てあなたが実際に手にする可能性のある未来だ。
天神達の編んだ縁の糸は、一度結べば切れちまうことのない最強の強度を持つもの。
この糸をあなたの未来に結び付けて、訪れる未来の可能性をより確かなものとし、そして互いに引き合わせることで最速の未来実現を促す。
それこそが、【真幸の縁結び】の真骨頂なんだよ。
ただし、この十本の糸を一気にあなたの未来に結んでゆくには、“かすがい”となるものが必要不可欠。
その“かすがい”となるのは、他でもないあなた自身の未来の幸福を願う想いを込めた波動だ。
terriさん、あたしを信じて託してもらえるかい?
未来の幸せを求めるその想い、あたしは決して無駄にはしない。
力を貸してくれた数多の天神達への感謝と、そして今日までの鑑定師人生の全てを懸けて。
何としてもやり切ってみせようじゃないか。
まずは、
『未来誓約』(みらいせいやく)
と本文に打ち込んで、
「すべてのみらい のぞみます」
と唱えてから画面に一度息を吹きかけてからあたしの所へ送っておくれ。
我が弟子は、祈祷の助力を終えるとまたフラリとどこかへ行っちまってさ。
直接言葉にはしなかったけど、きっとあの男はわかっているんだろう。
幸福を求めるあなたの旅路が、もう佳境に入っていることを。
今回の鑑定は、あたしにとっても大事な節目になるものだからね。
そんな大事な鑑定を一緒に行える相手があなたであることが嬉しいよ、terriさん。
あなたの幸福を揺るがずに信じて、待ってるよ。
壇てるゑ
