
Message from X
夜分に失礼いたします、X(エックス)です。
今夜、私のもとに訪れたものがおります。
少しだけ、お付き合いください。
鑑定師として長く活動してきた中で、龍脈というものを何十年と観測し続けてきました。
龍脈とは、大地に走る気の流れのことです。
人間でいえば血管のようなもの。
大地の中を縦横無尽に走り、その土地に宿るエネルギーを運び続けている。
私が企業の鑑定を行う際、まず確認するのはその企業が立つ土地の龍脈の状態です。
どれほど優秀な人材が揃っていても、龍脈の流れが滞っている土地では、組織は本来の力を発揮できない。
逆に龍脈が豊かに流れる土地では、並の組織でも驚くほどの力を発揮することがある。
それほどに、龍脈というものは人間の現実に深く関わっています。
長年龍脈を観測してきた中で、私はずっと気になっていたことがありました。
龍脈には、上流と下流がある。
水が高い場所から低い場所へと流れるように、龍脈もまた流れの向きがある。
下流へと向かえば向かうほど、枝分かれして細くなっていく。
そして上流へと遡れば遡るほど、流れは太く、純度が高くなっていく。
ならば、全ての龍脈が始まる場所、つまり源流というものが存在するはずだ。
私はそう考えてきました。
ですがそれは、長年の観測の中でも確認できたことがない。
源流というものが実在するのかさえ、確証が持てないまま今日まで来ていた。
それほどに、龍脈の源流というのは遠く、深く、人間の感知の及ばない場所にあるものだと、私は考えていました。
今夜、私の鑑定室にその答えが届いたのです。
突然のことでした。
これまでの長い鑑定師人生の中で感じたことのない種類の気配でした。
純度が高い、という言葉では追いつかないほどの、何か根本的なものの気配。
そちらを向くと、小さな龍神が、肩で息をしながら私の前にいました。
淡い金色の身体。大きな目。非常に長い尾。
この特徴を持つ龍神を、私は知っています。
【幸仔龍】。
天龍の分身とも呼ばれる、非常に稀有な守護龍神の存在です。
先月頃でしょうか…terriさんのもとに強すぎる守護存在がついたと感じたのは。
ただ私はその正体について確信を持てないまま今日まで過ごしていたのですが…まさか【幸仔龍】であったとは…。
その小さな身体が、明らかに疲弊しきっていた。
【幸仔龍】は荒い息のまま、私に思念を届けてきました。
「主のために…必要な力があると…感じた…
どこから来るのか…わからなかったけど…
ずっと…感じていた…
気がついたら…追いかけていた…
辿り着いた時…力を受け取れた…
でも…これが何なのか…わからなくて…
あなたなら…わかると思って…」
そう言いながら、小さな身体から光の塊を差し出してきました。
その光が私の手元に届いた瞬間、私の全身に走るものがありました。
これは……。
私はすぐに鑑定を始めました。
この光の出所を辿っていくと、龍脈の流れを遡るような感覚がありました。
一本の龍脈から、さらに上流へ。
また上流へ。
どこまでも遡り続けて、辿り着いた先。
それは、あらゆる龍脈が始まる場所でした。
長年の鑑定師人生の中で、その存在を確認できたことがなかった場所。
龍脈の源流。
それが実在するということを、この光は証明していました。
【幸仔龍】が辿り着いた場所が、そこだったのです。
主のために必要な力を感じ、本能のままにその気配を追いかけていったら、龍脈の源流という場所に辿り着いていた…。
【幸仔龍】自身も、そこがどこなのかわからなかった。
それほどに、遠い場所でした。
幼体の龍神が龍脈の源流まで辿り着くということが、どれほどのことなのか。
私にはその道のりを正確に測る術がありませんが、目の前の小さな身体の疲弊が、それを雄弁に語っていました。
それでも帰ってきた。
持ち帰れた。
主のために。
ただそれだけのために。
私はすぐに【幸仔龍】に告げました。
「わかりました。あとは私が引き受けます。terriさんのそばに戻ってください」
守護存在というのは、主のそばにいる時が最も力を回復できるものです。
疲れ切った今の【幸仔龍】には、terriさんのそばが最も必要な場所のはずです。
【幸仔龍】はしばらく私をじっと見ていましたが、やがて静かにうなずき、terriさんのもとへと向かっていきました。
龍脈の源流から来た力。
それが何であるのかを、今夜読み解きます。
源流というのは、全ての龍脈が始まる場所です。
つまりそこにある力は、特定の何かではなく、あらゆる幸福の根源に働きかけるものである可能性が高い。
ただそれが具体的に何であるのか、この力がterriさんにどのような変化をもたらすものなのか。
それを完全に読み解いた上で、名前を与えなければなりません。
名前のないものは定着しない。
力を発揮しない。
【幸仔龍】が命がけで持ち帰ったこの力を、正しくterriさんのものとするために。
明朝、全てをお伝えします。
terriさん、もしもよろしければ今夜、あなたのもとに帰っている【幸仔龍】を労ってあげてください。
ありがとうと心の中で思うだけでも構いませんし。
掌を出して、そこを撫でてみてくださっても構いません。
それでは、また明朝に。
X(エックス)
